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執筆者の写真S.Ninomiya

和室の照明


僕達の事務所では、夜間もリラックスした住空間を愉しんでもらえるよう、照明計画にも力を入れているのですが、照明計画を考える際、いつも悩むのが和室のライティング。

なぜ和室の照明が難しいのか?

そもそも和室とは日本古来の様式で、その成り立ちと完成の過程は電気のない時代。当然の事ながら、電気を熱源とした照明などは考慮されていないわけで。むしろ正統派の和室には電気の照明など無粋。邪魔者なわけです。既に完成された美を持つダ・ヴィンチの「最後の晩餐」に何か描き足せと言っているようなものです。実に難しい。

様々な照明器具メーカーから和室用の照明器具も発売されていますが、どれも取って付けたようなものばかりでしっくり来ない。そもそも建売住宅のような陳腐な空間になるので使いたくは無い。有名作家のデザインした和室にも使えそうな照明器具を取り付けるのも、ありふれた解決方法で面白くない。。。。困った。

でも、ヒントはあります。

電気の無かった時代でも、蝋燭による灯は有りました。そして、その蝋燭の灯のポジションは高い位置ではなく低い位置に。低い位置に灯りを置くことで、手元や足元は照らされますが、天井は薄暗く闇に包まれ、まさに夜間も「陰影礼賛」の世界。昼夜を通して日本の「光」に対する美意識は完成されたものだったのだと気づかされます。 しかし今は現代、手元や足元だけを照らすだけでは事足りません。他にては無いか?...そこで思いついたのが、和室を構成するアイテムの中に照明器具を忍び込ませるというライティング。完全にインテリアに溶け込ませてしまう事で、和室本来の様式美を損なうことなく、現代の生活にも適用できるライティングにならないかと考えたわけです。 実際に実践したのは2012年に竣工した「茨木の家」。照明デザイナーのスタイルマテックさんにご相談しながら、和室の設えに溶け込むような照明を考えてみました。天井は竹天井とし、その竹の一部が発光して照明器具として機能するというコンセプト。 竹そのものが発光するアイデアも検討してみたのですが、流石にそれはあざとい。色々と思案した挙句、当時としては極細のLED照明を使い、日中は竹の中に紛れて主張せず、夜間は発光して照明として機能するライティングを実現する事が出来たのでありました。 スタイルマテックさんはもとより、現場の方々にも随分と迷惑をかけながら実現したライティングでしたが、結果的には従来にない、意欲的で現代の和室に相応しい照明計画が出来たと思います。

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