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執筆者の写真S.Ninomiya

ルーヴル・ピラミッド再考


今さらですが、フランス/パリのルーヴル博物館に建つガラスのピラミッド、あれは実に秀逸な建築だと思うのです。設計は中国系アメリカ人のイオ・ミン・ペイ。1989年の竣工。元々、日々大量の来場者が訪れるルーヴル美術館において、従来のメインエントランスでは対応しきれなくなっているのを解決する為に、当時のミッテラン大統領が推進していた「パリ大改造計画」の一環として計画されたものです。 建設当時は大変な批判を受けた事でも知られています。いかにも西洋の洋館といった佇まいのルーヴル美術館の真ん前に、近代的な印象を与えるガラスと金属によるピラミッドを置こうというのですから、批判する側の意見は容易に想像できます。デティールも、デコラティブなルーヴル美術館とは正反対。ガラスを支持する鋼材は極限まで細く抑えられ、ガラスの透過性を強調するデザインとなっています。当時は「ルーヴルに相応しくない」と考えられたのです。 しかし、本当にそうでしょうか? 実は、ルーブル美術館そのものは12世紀に要塞として建てられたルーヴル城が元になっていて、時代とともに増改築が繰り返されて現在の姿になっているそうです。そして、その度に様式も変更され、用途さえ変更されています。常にその時代ごとの新しい価値を受け入れて変化してきたのがルーヴル美術館なのです。現代の表現であるガラスや金属によるストラクチャーを受け入れられないという理屈は全く筋違いです。 次に「ピラミッド」という形態について。 ご存知のようにピラミッドの形態というのは、非常に古い形態です。世界最古と言われるサッカラのピラミッドが紀元前27世紀といいますから、12世紀に建てられたルーヴル美術館よりも遥かに古い。つまり、デザインも古い。ピラミッドというモチーフは未来的なものではなく、過去のモチーフ。そして、非常に数学的に謎の多い形態でもあり、自然との対比という意味において、人類の英知を感じさせる形態でもあります。この性質は、人類の英知の表れの一つである「芸術」を収納する美術館の性質とも合致します。しかも、それをガラスと金属という現代的な素材によって構成するという。。。。 建設当初は賛否両論だったガラスのピラミッドですが、現在ではパリのランドマークとなり、パリ市民だけではなく世界中からルーヴル美術館の顔として受け入れられています。むしろ、アイコンとして認識しやすいその一見単純な形態は、以前のそれよりも受け入れられ易くなっているのかもしれません。 ・・・といった事を考えていたら、今更ですがルーヴル美術館のガラスのピラミッドというのは良く出来ているなぁ...と思ったのでありました。

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