現場で大工さん達と世間話しをしていた時、日本の寺社仏閣と、中国や韓国の寺社仏閣の違いが話題になった。共通の意見として、日本の寺社仏閣は他に比べて緻密で精度が高いという結論に。贔屓目ではなく、確かにそうだと思う。 ではなぜ緻密で精度が高いのかというと、各自が良いものを作ろうという意識を高いレベルで持っている事と、勤勉さの結果だろうと...つまりは国民性。 異論のある人はいないと思う。しかし、この国民性に悩む時もある。 例えば、物と物とがぶつかり合う所、業界用語で「取り合い」と言いますが、くっつけてしまうと不具合がある場合、隙間を空けたり、少しズラしたりして不具合が出ないような位置関係にしたりします。この時、その空かしたりズラしたり寸法が悩ましい。 1ミリなのか3ミリなのか、はたまた15ミリなのか...。ここは経験とセンスと予知能力がモノを言うところ。で、仮に3ミリと定めたとすると、これを皆で全力で3ミリにするよう努力する。 しかし、簡単ではない。 そもそも、建築は工業製品のような精度は無い。冷暖房完備で天候にも左右されない工場で、しかも機械が作る工業製品とは違い、建築は暑い日もあれば寒い日もある吹きっさらしの屋外で、雨にも風にも影響を受けながら、しかも建材は気温や湿度に左右され伸び縮みしたり反ったり、特に外国製の建材だと直角でなかったり、大きさがバラバラだったり破損していたり...そんな中で3ミリ空かしたりズラせというのだ...難しい。 しかも、その3ミリにどれだけの人が気付くのか?5ミリや15ミリだった場合との違いが分かるのか?...少なくとも、お施主さんをはじめとした一般の人は分からない。建築に携わっている人でも、ある程度の知識や経験、審美眼のある人でなければ分かりにくいと思う。そうすると、どっちでも良いのではないか?そんな事に労力を費やすのは、独りよがりで無駄な事なのではないか?...と思う。 でも、完成した建築を見ると、やっぱりなんか違うのが分かる。皮膚感覚というか、空気感というか、言葉でいうのは難しいけれど、明らかになんか違う。それは、細かい部分の集積が、全体を支配している事を無意識の内に実感する瞬間...3ミリの攻防は決して意味の無い事では無いと思うのです。
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