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執筆者の写真S.Ninomiya

パリ旅行記 その4/サヴォア邸2


「パリ旅行記 その4」はいよいよ憧れのル・コルビュジェ設計の「サヴォア邸」の内部に入ります。


サヴォア邸

「サ・ヴォア邸」はル・コルビュジェの提唱した近代建築の五原則、すなわち「ピロティ」「自由な平面」「自由な立面」「独立骨組みによる水平連続窓」「屋上庭園」を徹底的に実践したという意味で、現代建築に非常に大きな影響を与えた建築です。


玄関を入るとまず最初に目に飛び込んでくるのがこのスロープ。このスロープが二階へと誘いそして屋上へと繋がっています。


上階への同線はスロープだけではなく、もう一つこのらせん階段でも繋がっています。らせん階段とスロープは隣り合っていています。縦導線が平面の中で分散されているのであれば利便性を考慮した機能面からのものと考えられるのですが、隣り合っているので不可解なレイアウトです。


玄関ホールのカーテンウォールから見た外部。サッシのフレームの割り付けが縦長なのは、はめ込まれているガラスが曲面ではなく平面の為(当時はまだ曲面ガラスはなかった?)、平面のガラスを小割にして少しでも壁全体をなめらかな曲面として表現したかったからだと思われる。外構の緑が襖絵のように美しく映えています。


スロープ途中から中庭を見る。否が応でも高まる上昇感を感じます。


スロープを登り2階へ。右手にらせん階段、左手に中庭、正面奥がリビング。


リビングから中庭を見る。この大きなガラス戸は右半分が左側にスライドする開閉式。現代のサッシと比較してもかなり大きな開閉式開口部である事に驚く。


リビング見返し。右手に中庭が見える。左手に暖炉があるのが分かる。夏でも涼しいフランスでは、夏よりも冬の空調の方が重要だったようだ。気候の違う日本とは根本的に建築の成り立ちが異なることが伺えます。


これだけ大きいスライドドアなのに、そのフレームの華奢さに更に驚く。是非開閉させてみたかったが、この日は天候も悪かったことからか閉まりっぱなし、残念。


大開口のFIX(はめ殺し)側のサッシの手摺は木製のように思った。各部で感じた事だが仕上げは汚い。これは海外の現代建築全般で感じる。ここら辺は、日本人が神経質すぎるのか、はたまたその逆なのか。。。。


リビングより中庭を見る。屋上庭園へと繋がるスロープが見える。


中庭に出てみる。中央に作り付けのテーブルが見える。天気の良い日などはここで食事をしたのだと思われる。気持ちよさそう。


中庭からスロープ側を見る。スロープは1階から2階、そして屋上へと繋がっている。建物外周をジョギングして建物内に入り、そのまま屋上庭園までスロープで駆け上がる事を意図しているのだと何かの本で読んだけど、その真意は不明。


屋上庭園へと向かうスロープ。


屋上庭園へと向かうスロープの途中折り返し部分の踊り場からの見返し。下側に2階中庭とリビング、上側に屋上庭園が見える。


屋上庭園に登り切ったところ、正面に外部を見通せる開口部と作り付けのテーブルが設えてある。ここに座ってカフェオレやワインを飲んだのでしょうか。


スロープを登り切った左手の屋上庭園。「庭園」といっても、日本語でイメージする庭園を期待するとちょっと違う感じ。植栽もしょぼい。


上の写真の反対側。屋上庭園は高い塀で囲われ、外部からの視線を遮断しています。この塀はなぜか柱と梁の外部側の片面しか壁になっておらず、柱と梁の形が分かるようなデザイン。そのおかげか「内側感」が生じています。


屋上庭園からスロープ側を見返す。


水廻り。浴室と休憩する為の作り付けの寝椅子。現代の日本人の感覚からするとちょっと無理めな浴室ですが、建設当時のフランス人にはどのように見えたのでしょうか。。。。

浴室でも柱や梁とずれて配置されている左側の壁や、天井まで届いていない右手の壁など、ル・コルビュジェの提唱した近代建築の五原則の中の(構造体から切り離された)「自由な平面」への拘りが伺えます。


同見返し。


キッチン全景。設備的には流石に古臭さを感じますが、大きな開口部囲まれた明るく広いキッチンでの料理は楽しそうです。


キッチン見返し。奥にサービスバルコニーが見えます。ここで洗濯物とかを干したのかな(?)。

まとめ

夢にまでみた「サヴォア邸」の訪問。学生時代から50歳になる現在まで、いやという程写真や図面、さまざまな論文をを読んで、すっかり「サヴォア邸」の事を知り尽くし「卒業」したつもりだったのですが、やはり現物を見ると想像以上に素晴らしく格好良い建築であるという事を思い知りました。


横長のプロポーションは想像以上に横長で、想像以上に安定し、想像以上に美しいと感じました。

プロポーションは想像していた以上にスリムで美しいし、ディテールも現代のモダニズム系の建築家達が突き詰め過ぎて、切り捨ててしまったような部分…例えば雨水の水返し…など、基本的な事は押さえつつ新しい事にチャレンジしている姿勢が伺え非常に好感の持てる建築でした。


外壁と軒裏の取り合い。外壁からそのまま軒裏に繋げるのではなく、一度小さく段をつけて外壁を伝う雨水が軒裏に回り込まないよう工夫していました。

もうすっかり卒業してしまったと思いこんでいた「サヴォア邸」でしたが、じつはやっと入門したばかりだったと思い知った今回の訪問なのでありました。

おまけ

「サヴォア邸」の帰り道、行きに通った古い石畳の田舎道をてくてくと歩いていると、後方から僕を呼び止めると声が…。振り返ってみるとこの辺りを縄張りにしていると思われる猫ちゃんの姿が。


呼び止める声に振り返るとこの猫ちゃんが…。


いかつい顔に似合わず直ぐにゴロにゃんのポーズ。


抵抗する事もなく喉を鳴らす。この猫を「コル」と名づける事にしました。


しばらく付いてきていたコルですが、自分の縄張りから離れることなくここでお別れ。きっとコルは今まで「サヴォア邸」を訪れた沢山の人達をこのように見送ってきたのでしょう。

「パリ旅行記 その5」に続く。

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