「パリ旅行記 その5」は、その3・4のサヴォア邸(1931年竣工)に続き、ル・コルビュジェ繋がりで同じくル・コルビュジェ設計のラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸(1924年竣工)です。
ラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸 ラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸はサヴォア邸よりも7年早く竣工した建築で、サヴォア邸同様ル・コルビュジェの提唱する近代建築の後原則に則り実践した建築です。
ラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸はサヴォアとは違い、パリ市内にある為比較的アクセスしやすい場所にあります。
ラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸はこんな袋小路の一番奥のL型の敷地に建っています。依頼主はル・コルビュジェが発行していた雑誌『レスプリ・ヌーヴォー』誌の支援者でもあった銀行家のラウル・ラ・ロッシュ (Raoul La Roche) と、ル・コルビュジエの実兄にあたる音楽家アルベール・ジャンヌレ (Albert Jeanneret) という人達で、血縁の無い二世帯が住まう住宅です。建物は1棟ですが、内部では分割されていてそれぞれの住まいは行き来できません。
公開されているのはジャン・ヌレ邸のみ。
吹き抜けのある玄関ホールから階段を上がると、そこはギャラリーとなっている空間。右手の壁は絵画を飾る為の壁、その上のハイサイドライトと言われる高窓からの光を反射させる為の反射板が見えます。
反射板には照明が仕込まれていて、夜間は絵画を照らす為の照明器具となっていたようです。
左手にも右手同様採光の為のハイサイドライトが設えられ、その下の曲線の壁は3階へ上がるスロープとなっています。
このスロープが勾配がきつく、ちょっと上りにくかったです。
また、写真で見ると大きな空間に見えますが、実際には驚くほどこじんまりとした空間でした。
ギャラリーの見下ろし。
吹き抜けのある玄関ホール。左手下が玄関、右手に2階に上がる階段、左手中央に空中にかけられた渡り廊下。現代建築ではよく見らえる構成ですが、この建築が竣工した頃は斬新な空間構成だったのだと思います。
3階から玄関ホールを見下ろす。
空中にかけられた渡り廊下からギャラリー棟側を見る。正面の壁が天井に届いていないのは、近代建築の五原則の一つ「自由な平面」への拘りか?
渡り廊下部分のカーテンウォール。
屋上庭園。ラ・ロッシュ邸からジャン・ヌレ邸側を見る。
ラ・ロッシュ邸の屋根越しに見るパリの風景。サヴォア邸とは違い、かなり建物の密集したところに建っているのが分かります。ゆるくカーブした壁の部分がギャラリー。
屋上庭園の完成度はまだまだ。
近代建築の五原則の一つ「ピロティー」。もともとはガレージとしての使用を想定していたのだと思われますが、施されている植栽がオリジナルだとすると…用途不明。
ピロティー奥からの見返し。
随所にみられた壁付けの照明器具。オリジナルのものかは不明ですが、是非点灯しているところが見たかった。
ダムウェーターの滑車が薄っすらと見えるように型板ガラスで仕上げられている壁。「住宅は住むための機械」といったル・コルビュジェの志向が表れているのかもしれません。
まとめ
吹き抜けやスロープ、立体的に回遊するプランなど、それなりに見所のある建築なのですが、先にサヴォア邸をみてしまっているので、正直期待外れの感が否めない印象でした。 もしこれからこの二つの建築を訪れる機会のある方には、是非先にラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸を見て、次にサヴォア邸を見る事をお勧めします。
「パリ旅行記 その6」に続く。