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執筆者の写真S.Ninomiya

パリ旅行記 その9/ルイ・カレ邸1


「パリ旅行記 その9」は近代建築、ルイ・カレ邸を訪れます。

アルバ・アールト

ルイ・カレ邸はフィンランドの建築家アルバ・アールトによる設計で、竣工は1956年。お施主さんのルイ・カレさんは画商で、最初は当時のパリでは既に名をはせていたル・コルビュジェに設計の依頼を考えていたそうですが、当時のル・コルビュジェが主体としていたコンクリート造が好きではなく、知人にアルバ・アールトを紹介され設計を依頼したという経緯があります。

日本でのアルバ・アールトは、一般的に建築よりもアルテック社から販売されている家具の方が広く知られているかもしれません。日本で北欧家具といえばアルバ・アールトのデザインしたものや、その影響を強く受けた家具だったりします。


アルバ・アールトが1933年にデザインしたスツール。既に著作権が切れているのでIKEAとかでもコピー商品を作っていますが、脚のグラつきとか本物には程遠い出来栄え。まあ、その分本物に比べ激安ですが。。。

道のり

さてこのルイ・カレ邸、パリ郊外のRER(パリ高速鉄道) C線のSaint-Quentin-en-Yvelinesという終着駅が最寄り駅。ここまでパリ市内から40分ほど。そこから更にバスで30分ほど乗り、バス下車後更に20分ほど歩いたところにあります。

RER・バスともに乗り継ぎが悪く、特にバスは日に数本しかないという状態。更に、見学には予約が必要で(当然日本語以外)、一日の見学者数、見学時間も決められて、しかも見学できるのは土日のみで、バスは日曜休み。つまり、パリ市内に宿泊していてレンタカーを借りないとすると、土曜の午後しか行けないという…めちゃくちゃ不便な事になっています。

因みにルイ・カレ邸への行き方にはコチラのサイトを参考にしました→「メゾンカレの行き方」

ルイ・カレ邸の公式ウェブサイトはコチラ→メゾン・ルイ・カレ

日本から14:00の回を予約していたので、パリ市内のホテルを9:00に出発。ホテル近くのRER駅に向かうとなぜかクローズ(どうも駅舎を工事中らしく、パリ市内全てのRER駅が閉鎖中だった模様)しかたなく、RERに乗り継げるパリ郊外の駅まで地下鉄で移動し、そこでRERのC線に乗り継ぐ事に…既に不安いっぱい。

11:00過ぎになんとかSaint-Quentin-en-Yvelines駅に到着。


Saint-Quentin-en-Yvelines駅のホーム。右に見える2階建ての車両がRER(パリ高速鉄道)。

で、次はバス停探し。事前に調べていた情報をもとにバス停を探すのですが、、、、無い。どうもバス停の位置が事前情報以降変更になっていたようです。


こちら(中央奥左手)が正解のバス停。

バスの時間まで少し時間が有ったので、駅に戻ってコンビニで軽食を購入しようと思ったのですが、日本のようにいつでもどこでもトイレが見つからないという今後の展開を考えると、空腹をこらえて我慢する事に。

そして12:00発のバスに無事乗車。

因みに、パリではパリ・ヴィジットという期間内であれば地下鉄・RER・バスが乗り放題のチケットを購入していたのですが、郊外のバスも適用されるの情報が無く乗車するまで不安だったのですが、この郊外のバスでも問題なく使えました。

そして、このバスでフランス語ペラペラの日本人女性と乗り合わせます。なんでも千葉大学大学院からパリの大学に交換留学生で来ているという大学院生。大学院では建築を学んでいるとの事で、行先は勿論僕と同じルイ・カレ邸!…言葉の通じない異国でこんな嬉しい事はありません。ここでいっきに気が大きくなります。


欧州特有の美しい風景をみながらバスは進みます。


バスを下車すると次は徒歩です。バス通りは大きな敷地のお家が点在しているのどかな風景。


ところどころ牧草地帯が広がっていて、馬が放牧されていました。


そして、山道に突入。本当は他にもルートがあるのですが、千葉大の大学院生が「こっちの山道の方が面白そう」と言うのです。もうついて行くしかありません。(前方を歩くのが千葉大大学院生のHさん)


途中で見つけた農家の裏門。日本でいうところの藁ぶき屋根でしょうか。その上に雑草が生えています。


ルイ・カレ邸の前にあるJean Monnet邸。Jean Monnet氏はEU統合の父とされる政治家なのだそう。こちらも見学可能なようでした。

そしてルイ・カレ邸の門に到着。この時点で12:50くらい。予約している14:00まではまだまだ時間があるので、とりあえず門の前で時間を潰す事に。すると、学生さんらしき東洋人ボーイズ6人組が到着。話を聞くと、東京理科大学と大学院の学生さん達で、論文を書く為にパリの都市計画を調査する為に長期滞在していて、その調査も終わったので今日はルイ・カレ邸を皆で見学に来たとの事。

この時点で日本人計10人。こんなパリの片田舎なのに。。。。

ルイ・カレ邸


1時間もボーっと待っていられないので、門は開いているし、とりあえず中に入ってみる事にしました。このカーブした緩いスロープの先にルイ・カレ邸があるのだと思われます。

てくてくと2~3分くらい歩いたでしょうか。

お!あ!


出た~!ルイ・カレ邸です。しかも、写真集なんかで良く見るアングルそのまま!

そういえばル・コルビュジェのサヴォア邸も、ルイ・カレ邸同様に木立の中を抜けてその先に建っているというロケーションでした。これは広い敷地だからこそ可能な計画ではあるのですが、そういう演出は敷地の大小に関わらず可能だと思います。例えば、道路に面した部分にいきなり玄関があるのではなく、ちょっと迂回するような導線をつくって、道路から見えないような所に玄関を設ける。そうする事で、その迂回路を散策する気分が味わえたり、見えていなかった玄関が見える驚きや喜びを感じられたり、ちょっとした工夫で豊かな建築に成りうると思います。

さて、無事に到着したのは良いのですが…何せ予約の1時間前…。


当然、玄関も閉まっています…。

仕方がないので、建物の外観を見学しながら時間を潰す事にしました。


裏手(南側)に回ってみました。これも写真集などで良く見るアングルです。被写体が良いと機材(カメラ)の違いこそあれ格好良く写せるのだなと実感。


北東から見た外観。


南東から見た外観。


西側から見た外観。


ルイ・カレ邸の外観上の特徴はいくつかあるのですが、その中の一つがこの薄く見えるよう工夫された軒先と雨樋の処理の仕方。そして格子。格子は日本建築の影響からきているらしいのですが、アールトは来日したことはありません。つまり、日本建築を写真で見て影響を受け、研究し、自分の建築に取り入れたわけですね。


縦樋。呼び樋を使わずストンっと真っすぐに下しています。


こちらは切っぱなしの雨樋。金属製の鋳物でかなり凝った作りになっています。ここからジョボジョボと雨水が多礼流されるわけですが…


切っぱなしの雨樋の下にはこういう枡が設けてあって、ちゃんと排水できるようになっていました。


ひきのアングルで見ると位置関係が分かりますね。


で、そうこうしているうちに玄関が開き、お知らせ看板が立てられました。予約の14:00まであと5分、割とキッチリしている。

そして、待ちにまった内部空間へと入っていくのですが続きは「パリ旅行記 その10」で。

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