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執筆者の写真S.Ninomiya

狭さと豊かさ



安藤忠雄さん(以下、安藤さん)設計の「日本橋の家」を観てきました…いや、正確に言うと、「日本橋の家」をコンバージョンしたギャラリーで「建築家の住宅模型」展を観てきたのですが、展示物そっちのけで建築ばかりみてしまうのは何処の美術館に行っても一緒。

「日本橋の家」は間口3M奥行き15Mという狭小地に建つ鉄筋コンクリート4階建ての(元々は住宅)建築。

いわゆる狭小住宅。


「日本橋の家」は間口3M奥行15Mの狭小住宅。

普通、狭小住宅の場合は如何に最大の平面積を確保するかを考え、その狭さを克服するか思案するのですが、この「日本橋の家」はその真逆。狭い敷地に建つ建築を、更に細かく分節するというプラン。

しかしそこは安藤さん、ただ単に細かく分節するのではなく、巧みに高さを与える事で単純な平面構成を複雑で様々なシーンが生じる豊かな空間構成を出現させていました。


リビングとして使われていた空間。三層吹き抜けとなっていて、狭小地に対して横ではなく縦に広がりを作る試みをしている。


リビングとして使われていた空間を見上げる。

この、単純だけど複雑な空間構成は安藤さんの真骨頂には、いつ体験しても興奮してしまいます。

因みに、分節されたそれぞれの部屋ですが、やはりお世辞にも広いとはいえません。何れも四畳半かそれ以下の広さしかない。ただでさえ狭い敷地を細かく分節しているのだから、当たり前といえば当たり前。

しかも、実際の生活はその狭い部屋の中にクローゼットやベッドなとの生活に必要な家具を入れるので、僕が観たギャラリーとなった空間より更に狭いものである事は容易に想像できます。

しかし、そこで営まれていた生活は、その狭さを克服してなお有り余るものであった事の方が容易に想像でき、広さだけを求める空間の在り方に、あらためて選択肢の幅を持たせる確信を得たのでありました。


中庭。この写真に写っている横幅がこの建築の横幅そのもの。間口3Mという寸法が如何に狭いか分かる。

ところで、訪問時にこの建築のクライアント(オーナー)が在廊されており、貴重なお話をお伺いする機会を得ました。

色々とお聞きした事はあるのですが、もっとも気になった事が「良くこのプランにGOサインを出したな…」という事。


建築が完成してしまうと、狭くても空間の素晴らしさを理解するのは容易いのですが、GOサインは建築が完成する前に出さなければなりません。

もちろん、クライアントに建築家と同じくらいの空間認識能力が備わっていれば問題ないのですが、殆どのクライアントは残念ながらその能力は備わっていなくて、それを前提で図面だけでなく模型やパースを駆使し、それでも理解して頂けなくて苦労するわけです。

で、「よくもGOサインを出しましたね?」とお聞きしたわけです。

そうすると、「もともと安藤さんのファンで、書籍を読んだり講演会に行ったりしていて、安藤さんの建築をよく理解していたし、安藤さんを全面的に信頼していた」というお答え。

ん~、、、なるほど。安藤さんも凄いがクライアントも凄いのでした。

さて、そんな「日本橋の家」が見学できる「建築家の住宅模型」展は11月20日まで。詳しくはこちらから>>>>

因みに、現在僕たちの設計中で進行中の「寺田町の家」は間口3M奥行12M。「日本橋の家」よりも更に小さいのであります。


現在進行中の「寺田町の家」。



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