兵庫県で進行中の「西宮の家」がお引き渡しを目前に最後の詰めに入っています。
現在工事中の「西宮の家」
この「西宮の家」の敷地は、ちょっとした高台の敷地でいわゆる要望の良いロケーション。設計するにあたり、当然要望の良さを生かした計画にしたいし、お施主さんもそれを期待している。
眺望の良いロケーションに建つ建築というと、やはり有名なのは建築家 ピエール・コーニッグ設計の「ケース・スタディ・ハウス♯22」ではないでしょうか?
ピエール・コーニッグ設計の「ケース・スタディ・ハウス♯22」。ロサンジェルスが一望できるロケーション。近景と遠景の巧みな調和。(ロサンジェルス観光ガイドより転載。Images used with permission - Stahl House ®, Inc.)
コーニッグがこの「ケース・スタディ・ハウス♯22」を設計したのは1960年。今から56年も前の事。
ところで、実際のところ眺望の良さを生かすにはどうしたら良いのか?....結構悩みます。
出来るだけ大きな開口部(窓)を確保して風景を取り入れる…というのは安易に思いつくところでしょうが、どうもどれだけでは上手くいかない、ちょっと違うよな…という気がします。
いくら遠くの風景を沢山見える様にしても、それはあくまでも遠くの風景でしかなく、展望台から見る風景と変わらない。そこには遠近感や奥行きは無く、ただの風景…直ぐに飽きてします。
ではどうするか?…悩む。
そこで一つ思いついたことが、遠景を生かすために近景を活用するという事。
例えば、夜空に浮かぶ月はそれだけを見ると遠く宇宙の向こうにあるようにしか見えないですが、ビルとビルの隙間から見える月は驚くほど近くにあるような錯覚をおこします。
これは遠景に対して近景の比較対象があるからそう見えるわけです。
そういえば前述のコーニッグによる「ケース・スタディ・ハウス♯22」も、実は遠景だけでなく、深く突き出した軒や、青い空を写し込むプールなどの近景が巧みに調和される事で、遠近感のある深みのある視野を生じさせているのではないかと思います。
遠景と近景の巧みなバランスが、眺望の良い敷地を生かす重要なポイントではないかと思うのです。