建築でいうところの「映り込み」という厄介な現象をしっていますか?
映り込みとはガラスや光沢のある仕上げ材に照明の光源が映り込んでしまう現象なのですが、せっかく照明を間接照明にして光源が見えないようにしているはずなのに、光沢のある床や壁、天井などに、隠したつもりの照明器具がバッチリ映り込んでしまっている現象です。
実は、いくら良いデザインをしていても、この映り込みを想定していなかった為に残念な結果になっている建築は少なくありません。
この映り込み、ホテルのロビーやショールームのような空間の場合はメリットとして働きます。輝く光源が視覚に入る事で華やかさを意識させるからです。
ところが、和の空間やしっとりと落ち着きを求めるような空間の場合はデメリットとして働きます。常にチラチラと光源が視覚に入る事により脳が常に刺激され、リラックスできないからです。
住空間におけるリビングなどでは特にデメリットが多く、全く寛げないどころか疲れやすい空間となってしまいます。
僕たちが住宅を設計する場合、必ずその映り込みを視野に入れ、どう扱うかという事を考えながら照明計画をしたり仕上げ材を決めたりしています。時には、映り込みを逆手に取った計画にする事もあります。
映り込みを逆手に取った例(名古屋の家)。光沢のある床仕上げへの光源の映り込みは避け、照らされた対象のみが床面に写り込む事で空間に奥行を出している。
実は映り込みさせてしまいがちなペンダント照明も、セードの色や高さを工夫する事で光源が中庭のガラス面に写り込まないようにしている。ガラス面への映り込みを軽減させる事でガラスの透過性を上げ、内外空間の連続性を高めている(中百舌鳥の家)。
設計する側の人も案外気づいていないこの映り込み、これを如何に上手くコントロールできるかは、実は心地よい空間づくりにおいて非常に重要な要素なのです。