教科書の建築
今だに建築の教科書を開くと、エポックメイキングな建築としてル・コルビュジエの「サヴォア邸邸」や、フランク・ロイド・ライトの「落水荘」などが挙げられるわけですが、前者は1931年に竣工、後者は1936年の竣工。
1931年に竣工したル・コルビュジェによる設計された「サヴォア邸」。
つまり、この二つは90年ほど前に建てられた建築という事になります。90年も前のデザインが今だにエポックメイキングなデザインとして教科書で語られる…これはいったいどういう事でしょうか。
90年前の創作
音楽の世界で90年前の楽曲というと、完全に懐メロ扱いだし、当時新しかったロックも今やクラッシックに分類されてもおかしくない。
絵画の世界でも、ピカソやダリなど90年ほど前に活躍した画家も、今やモダンアートというにはちょっと違和感がある。
しかし、建築はいまだに90年程前にデザインされたものが新鮮さをもって受け入れられている…つまり、建築のデザインは実に息の長いものだという事を現しているのではないでしょうか。
表面的なデザインは息の短いデザイン
勿論、建築の世界でも短期的な流行はあるけれども、多くはその本質的な部分ではなく、仕上げ材や色や柄などの表面的な流行。
ファッションの世界では毎年流行の色や素材が人為的に操作され発表され流行が作り出されていますが、服の形そのものは大きく変わらない。
日本の民族衣装である着物が、いわゆる洋服に取って代わったような劇的な変化ではない。
また、効率性を上げる為に考えられた工法や、耐震性や耐久性の向上の為の様々な新しい技術は次々と開発されていますが、それらが市民権を得てスタンダードとなり定着する前に、次の技術に取って代わられて短命になる事も多い。
息の長いデザインを目指して
つまり、建築の世界では本質的な意味において、新しいものは早々生まれてこないし、新しいものを生み出す事は難しい事。そして、それだけに息の長いデザインで有ることを意識していないと、毎年流行の変わるファッションのように飽きのき易いデザインになってしまうと思うのです。